養蚕農家の伝統行事「小正月飾り作り」

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長瀞町の養蚕農家の瀬能さんは、毎年、養蚕農家の伝統行事でもある小正月飾りを作り、無病息災とともに養蚕倍盛を願います。

瀬能さんは、高校卒業以降、養蚕、原木椎茸、自家用の米を栽培します。養蚕業では、平成21年に蚕糸功労賞(財団法人大日本蚕糸会)も受賞しました。(本記事は平成29年1月に取材)

 

小正月飾りのうち、「十六花(じゅうろくばな)」に使う「ニワトコ」の枝は、1年で長く伸びることで縁起が良いとされます。節間約16箇所を薄く削り、花に見立て、玄関や神棚などに飾ります。16という数字には、蚕の脚が16本あることからともいわれています。

 

小正月は旧暦の正月にあたり、1年の最初の満月の1月15日とされます。太陽暦では、元日から7日までを「大正月(おおしょうがつ)」、15日を「小正月(こしょうがつ)」と呼ぶようになりました。小正月にはモチを繭や繭籠、臼やウグイスの形にした「まゆ玉」などのめでたいものを神棚に供えて、その年の農作物の豊作を願います。「まゆ玉」は本来白いもののみを飾ります。

 

小正月飾り作りは、2日に山入りをして、小正月飾りに使う「ニワトコ」や「オッカド」の木を集めます。

3日からそれらの木や枝を使い、神棚に飾る「削り花」「粟穂(あわぼ)」「稗穂(ひえぼ)」「臼」、ニワトコの節間を削って花状にした「十六花」、トイレに供える魔除けの「守り刀」、小豆粥をかき混ぜる「粥かき棒」と食べるための「孕み箸」を作ります。

14日に正月飾りの松を外して飾り付けます。

15日の朝には、今年の歳徳神(としとくじん)の方角(恵方)を拝み、粥かき棒にまゆ玉をつけて小豆粥をかき混ぜ、まゆ玉への粥のつき具合を見て今年の作付けを占います。

瀬能さんは、平成23年の東日本大震災以後、昨年の感謝と今年1年の願いを込めて四字熟語を飾ります。今年は「春風萬里」と書初めました。

 

瀬能さんは、「養蚕をやっている以上、一つの文化として、守り続けたい。」と話します。

 

神奈川県鎌倉市にある、鶴岡八幡宮の宝物殿では「迎春 おめでたいお正月のお飾り~伝承される祈りのかたち~」として、瀬能さんが作った小正月飾りを元日から2月4日まで展示しています。また、皆が無病息災で幸せになれるように願い、白繭の生糸2kgを献上しました。

 

平成29年1月7日には、さいたま市にある、県立歴史と民俗の博物館で、「小正月の造形~長瀞に伝わる祈りのかたち~」として、削り花の実演をしました。

 

 

「十六花」を作る瀬能さん

「十六花」を作る瀬能さん

 

「粟穂」「稗穂」「削り花」

「粟穂」「稗穂」「飾り花」

 

「孕み箸」「臼」「粥かき棒」

「孕み箸」「臼」「粥かき棒」

 

「守り刀」

「守り刀」

 

小正月飾り

小正月飾り